詭弁論大会
拍手が止むと、いよいよあなたの順番が回ってきた。あなたは緊張のせいか全身が強張っていたが、檀上から降りてきた友人が口を歪め、あなたの背中を軽く叩いたので、それで幾分か楽になったようだ。
原稿用紙のざらついた感触をもう一度確かめると、あなたは檀上へ向かった。
しん、とした静けさが辺りを支配していて、とてもこの大教室に人が集まっているとは思えなかった。
面識のない他学科の各代表と担当教諭、それに校長までもが、次の発表者の一挙一動をじっと見つめていた。
そしてあなたは対峙する。
いよいよ成果が試されるときが来たのだ。
背筋はきちんと伸びているか。
――よし、大丈夫。
身嗜みは整っているか。
――うん、問題ない。
下ばかり向いていないか。真っ直ぐ前を見ているか。
あなたは息を深く吸い込むと、はきはきと言った。
「私は今から弁論いたしません。何故なら、言葉では伝えられない思いを伝えたいからです」
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