犯人は誰だ
――ブッ。
永遠とも一瞬ともつかぬ有声音が坂ノ倉宅を襲った。
それは気心の知れた者同士だからこそ降りかかる試練。
やがて、鼻をつく微かな違和感が閉鎖空間に漏れだす頃、一同は確信した。
犯人はこの中にいる、と。
しかし誰も口を利こうとしない。
知っているのだ。
疑わしき者こそが最初に取り繕うことを。
音の発生源は、居間。つまりここだ。
容疑者は三人。坂ノ倉家自慢の見目麗しき三姉妹。
現場は完全に封鎖されているため詳細不明だが、危険を冒して換気を試みる愚か者などいるはずもない。
だれもかれも馬脚を露すことを今か今かと待ち望んでいるのだ。
長女は次女を、次女は三女を、三女は長女を、お互いに監視し合う。
だがその膠着状態も長くは続かなかった。
またもや有声音が鳴り響いたのだ。
しかも、単音ではない。
俄然高まる緊張。
フェーダーの上がり続けるノイズ。
そして。
「あんたたち、早くお風呂入りなさい」
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