透明人間予備軍
かつての友人たちが俺を置いてどこか遠い所へ去っていく。彼らは楽しげに小さな輪の中で昔話や近況に花を咲かせている。
俺はといえば、相変わらずマナーも常識も知らないまま怠惰な日々を送るだけだ。そのうち、すべてがおっくうになって考えるのをやめた。
それでも、ふっ、と脳裏にまだ俺がまともでいられた頃が蘇って、俺を責め立てる。過去と今の自分との間にあるズレが大きくなればなるほど、その輪は小さくなっていくような気がした。
そして、はたと気づく。
――なんだ、俺の居場所なんてどこにもなかったんだ、と。
そうしたら不思議と笑みすらこぼれた。笑っているのだ。かつて身につけたあいまいで儀礼的で薄っぺらな、その表情で。
もうすぐ何時もの電車がやってくる。
ノーウェイ・シティをカナル型イヤホンで頭に流し込み、俺はあと四十年続くだろう日常に擬態した。
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