今も昔も

 懐かしいな、と男は思った。
 地元の道を走らせていると、昔通っていたおもちゃ屋が外観そのままに営業していたので、車を止め導かれるまま入店した。棚に並ぶ駄菓子、模型、ゲームなど、今も大して品揃えに代わり映えはないのだな、と感心していると心なしか様子がおかしいことに気付く。
 直径五メートルほどのサーキットの真ん中で、子供たちが数人、山積みにされたおもちゃを前に何かを言い合っているのだ。
 よく耳を傾けてみると、「さすがこども店長」「これも事業仕分けだ」などと物騒な言葉が飛びかっている。
 見兼ねた男はその輪に割って入り、
「君たち、食べ物の好き嫌いだけはしちゃいけないよ。我が家の仕分け人を怒らせると大変だからね」
 すると、子供たちはぽかんと口を開け、腹を抱えて大笑いし、四方八方に逃げ出した。
 むっとした男は一人の子を捕まえてやんわりと問い質した。
「ここ、ボクの家なの。でもお店仕分けされちゃったんだ」
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