お化け屋敷

 僕は、お化け屋敷が大の苦手である。
 そのせいで、三人の彼女に見放され、二人の彼女に呆れられ、今の彼女に笑われている。
 別に男として汚名返上を晴らしたかったというわけでもないが、僕らは今、お化け屋敷に来ている。
 薄暗い通路をおっかなびっくりで歩く彼女と、その後ろを歩く僕。
 何かのしかけが作動する度にそこかしこで悲鳴が上がっている。
 もちろん、僕らもそのご多分に漏れず、彼女が断末魔のような叫びを上げる度に、びくっと体を震わせるのだ。
「ほら、先へ進もう?」
 と、僕の袖を引っ張る彼女はなぜか笑顔で、理解に苦しむ。
 そして、次のポイントで、また悲鳴。 
「あはは、本当に怖がりだね」
 お化け屋敷を抜け、いかにも楽しそうな彼女の前で、僕は憂鬱だった。
 言えるはずがない。
 お化け屋敷のお化けよりも、僕の袖を離さず、鬼気迫った形相に照らし出される彼女のほうが――だなんて。
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